人が亡くなった時、悲しいだけではすまないものがあります。相続が発生したことにより、各種手続きをする必要が生じるからです。
その実務は大変に煩雑で面倒なものですし、法的なことに普段慣れ親しんでいない多くの人にとっては、何から始めたらいいのかよく分からない、という先入観と戸惑いが大きいことでしょう。
ですが、分からないし面倒だから、忙しいからなどといって先伸ばしにするのは避けた方が賢明でしょう。
というのは、相続手続きはすみやかに行わないとかえって面倒になってしまうことがあるからです。たとえば、家庭裁判所に相続放棄の申述を行う場合には、自身に相続が発生したことを知ってから3ヶ月以内にする必要があります。
また、遺産分割協議がまとまったのに、名義変更をせずに放置しているようなケースも見受けられますが、これも問題です。たとえば、亡くなった父の不動産を、相続登記手続きをせずに何年か経過してしまってそのまま父名義になっている場合です。その不動産を売却する話があって、いよいよ売却をしようとすると、名義が問題となります。父から相続人の名義に変更しなければ、売却はできないのです。
このような段階になって、たとえば母や子が認知症になっていたら、どうしたらよいのでしょうか。遺産分割協議は法定相続人全員で行う必要がありますが、相続人が認知症で判断能力が低下していると、遺産分割協を有効に行うことはできませんので、成年後見人の選任が必要となります。成年後見人の選任の手続きは、家庭裁判所で数ヶ月かけて行う必要があるため、その間は不動産の売却ができないということになります。
このような事態を避けるためにも、遺産分割協議が整ったのであれば、すぐに名義変更の手続きを行うのが賢明です。