遺言によって財産を第三者に無償で与えることを、遺贈といいます。生前贈与をすると、贈与を受けた人に、贈与税が課税されますので、遺贈をうけた人にも、贈与税が課税されるようにも思えます。しかし、遺贈の場合には、贈与税ではなく相続税がかかることになります。

相続税の申告は、通常は申告義務者全員が一通の申告書で行います。複数の申告書を提出すると、それぞれの申告書の内容に不一致が発生することがあり、するとどちらの申告書が正しいのか、税務署も税務調査を行うことになります。このようなじたいを避けるためには、一通の申告書で行うことが望ましいということになります。そして、前述のように、遺贈を受けた受贈者にも相続税の申告義務がありますので、受贈者も相続人と協力して、申告を進める必要があります。

このように、遺贈の場合には贈与税ではなく相続税がかかることから、税金面でのデメリットを避けるために、生前贈与をやめ、遺言を利用して贈与する(遺贈する)というケースもあります。生前贈与だと多額の税金がかかるため、遺贈にして税金をなるべく減らす、またはかからないようにするということです。

もう少し詳しく言いますと、相続税の基礎控除は、平成27年1月1日以降は縮小される予定ですが、現在は「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」について認められています。つまり、法定相続人が3人おれば、8,000万円までは相続税がかからないということになります。これに対して、贈与税の基礎控除は、年間110万円しかありません。かりに1,110万円の贈与を行うと、贈与税はおよそ275万円も課税されることになります。このようなことから、税金の負担軽減のために、遺贈が利用される場合があるということです。

また、不動産の遺贈の場合には、相続税以外にもかかる税金があります。不動産取得税と、名義変更の際にかかる登録免許税です。どちらも固定資産税評価額にかかります。不動産取得税は3%(宅地の場合、平成27年3月3日までは固定資産税評価額の2分の1に対して3%)、登録免許税は2%の税率です。

このような贈与と相続の関係の税金については、各種の控除や特例があり、夫婦間の贈与についての贈与税の特例や、相続時精算課税制度の利用など、いろいろなシミュレーションを行い、慎重に検討する必要があります。特に不動産の場合には課税価格も大きく、税金も無視できるような少額では収まりませんので、安易に名義の移転を行わず、まずは専門家に相談することをお勧めします。税金については、税理士さんが専門になりますが、不動産登記の専門家として、司法書士に相談されてもよいでしょう。
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被相続人が年金を受給している場合、未支給の年金が発生することがあります。
年金と言うのは、「後払い」とです。つまり、4月15日に支給される年金は、2月・3月分の年金であり、6月15日に支給される年金は4月・5月分の年金ということになります。したがって、年金を受給している方が6月1日に亡くなった場合、4月・5月分の年金を受給せずに亡くなったこととなります。これが、未支給年金です。

未支給年金は、相続人が受け取ることとなりますが、相続人固有の権利として受け取るのか、遺産として受け取るのかにより、遺産分割協議の対象となるかどうかが異なることになります。生命保険金のように、相続人固有の権利として受け取るのであれば、遺産分割協議の対象となりませんが、遺産として受け取るのであれば、遺産分割協議の対象となります。この点については、従来、判断が分かれていました。

この点について判断したのが、最高裁平成7年11月7日判決です。最高裁は、国民年金法19条が「年金給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき年金給付でまだその者に支給しなかつたものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であつて、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することができる。」と規定していることから、支給年金を相続財産ではないと判断しました。したがって、未支給年金は遺産ではないのですから、遺産分割協議書に、遺産として載せるのは間違いということになります。また、遺産ではない以上、上記の受給権者は、相続放棄をしたとしても、受給権があるということになります。

当たり前ですが人間には寿命があります。男性であれば70歳前後、女性であれば80歳前後とも言われています。個人差はあるものの、寿命を全うすれば必ず亡くなります。
お葬式の準備も大変な作業ですが、その後色々と面倒になってくるのが、いわゆる遺産相続の問題です。
親戚や兄弟の人数が多いと、遺産分割協議やその協議にもとづいた相続の手続きが大変になります。また、定期的に連絡を取り合っていない親戚、兄弟の場合だと、相続内容を巡って、感情的な対立が起きる恐れがあります。
どうしてもヒトはお金を絡むと冷静な判断力を失います。相続に関する手続きは、身内だけで進めない方が良いでしょう。
遺産分割協議がまとまらず、話し合いが暗礁に乗り上げたら、信頼できる弁護士事務所に相談した方が無難です。ちなみに、遺産分割協議のような家事関連の争いについて裁判や調停の代理人となることができるのは、弁護士だけです。裁判外の話し合いについても同様で、弁護士以外が他人の家事紛争に介入することはできません。司法書士は簡易裁判所の訴訟代理人となることができますが、やはり家事手続きについての代理人になることはできません。
弁護士以外の人が他人の紛争に介入して報酬をえた場合には、弁護士法72条違反となり、2年以下の懲役または300万円以下の罰金が科せられることがあります。
家事に関するトラブルに関しては、相続が発生してからではなかなか解決が難しいこともあります。可能であれば、相続発生前に遺言を残すことで、トラブルを未然に防ぐことができるかもしれません。
遺言については、公証役場で公正証書遺言を作成するのがもっとも確実な方法です。自筆証書遺言や秘密証書遺言と言う方式もありますが、法律の専門家である公証人が関与する公正証書遺言は、後日遺言の効力を争われる可能性がぐっと低くなります。
公正証書遺言の内容についても、弁護士に相談するとよいでしょう。今では気軽に無料相談が出来る窓口が用意されています。リーズナブルな料金で相談に応じてくれる事務所も少なくないので、気軽に電話やメールで、お悩みを打ち明けられるでしょう。
親族間のトラブルを起こさないためにも、遺言に関する手続きは、積極的に第三者の知恵と目を借りたいところです。

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